スコットランドゴルフ膝栗毛


まあ楽しいツアーだった。三者三様の外国旅行、ゴルフ旅行をしていて、3人で行くのは初めて。
アクシデント多々にもかかわらず、それがストレスにならなかったのは、
それぞれがゴルフに情熱を持っていたからだろう。
このレポートは、今後スコットランドで棒振りを企てている人にとって、
OB一歩手前、かろうじて残ったボールから始まり、紆余曲折の道中、
サイゴは3人ともパーで終わった喜びを満喫できるガイドになっている。
マメコブン、セイウチ師匠、おつかれさま。
これから行くあなたはもっと疲れるように。 
by:カジマキ  撮影:菊地セイウチ秋雄




SCOTLAND ゴルフ膝栗毛

2014/7/31:BA006 ・ 8/4:BA1458 ・ 8/10:BA1477→BA007
なる駕籠やを使って、旅してまいりました、ゴルフの聖地詣で。
宿場や川の渡し舟で、しでかした失敗やら、恥さらしのかずかず、
これから似たような計画を企てた皆さんの参考になるかとまとめておきました。 by:マメコブン(K島)



 プレストウイックGC、テイアップ前に。左からカジ先輩、セイウチ師匠、K島




1:出発までのいきさつ

旅立ちのとき、クラブを同行させるようになって30年は経つだろう。国外は最近でこそタイ・ホアヒン専門になってしまったが、マウイもカウアイもモロカイもハワイもバリもベトナムもメルボルンもケアンズもパースもLAもフロリダもマラガもマルベーリヤも行った。あ、グアム・サイパンも行った。あそこは国外か(笑)。さて、ふってわいたように全英オープンでしられる、スコットランド行きの話が持ち上がった。その前にロンドンで野暮用があるので、よくロンドンに行っている「数独の父」石神井高校の先輩カジさんに声をかけたのだ。返事はすぐ返ってきた「おー、友人のセイウチ師匠が、脚の動くうちにセント・アンドリュース回りたいって言ってる。オレも行く、運転はまかせておけ!」運転をまかせられるのは超ラッキー。自分の海外ゴルフにおけるアキレス腱はレンタカーである。運転したことがないわけではないが、パースでは駐車場でドアを大きくへこませている。フロリダでは40分間車線変更なしで走った。ハワイ島なら運転するがオアフでは運転希望しない。とまあ、この申し出は「渡りに舟」であった。「じゃ、ホテルとゴルフ場はなんとかします。近々、3人で打ち合せしましょう」となったのは5月下旬のことであった。

タイのゴルフ場なら、かなりの「通」である。ハワイだって、昔はよく通った。しかしなあ、スコットランドは知らんぞ、ホームページ探しても、テイーチャー中谷氏みたいな、懇切丁寧なページは見つからない。頼るべきはゴル友、キムラ君なら知り合いいるんじゃないかと言うことで問い合わせ、紹介されたタケイさんとは、昔、シングルロード杯で回ったことがあった。恵比寿のビヤホールでスコットランドゴルフ事情を予備取材、予想外にタイヘンなことが判明した。手帳に箇条書きしたことを記しておく。

  • セントアンドリュースはオールドコースやらなきゃ意味ない。ただし予約は取れない。朝一で並んで、2人か3人の空いたところにいれてもらうこと、6時に並べばたぶんOK。
  • 行くなら、ぜひプレストウイックをプレーされたし。THE OPENの始まったコース、やるなら16時前後のスタートを取ると、夕陽が最高。よって北海の側(セントアンドリュースなど)と大西洋側を移動する必要あり。
  • ハンデキャップ証明書は必要。コースによっては担ぎになることもあるので、担ぎ用のバッグを準備されたし。
  • ゴルフ場の予約はメールで取れる、必ず取ること。曜日によってはビジター不可のコースも多い。
  • セーターのほかに雨具・防寒衣も忘れないこと、短パン? 何考えてるの?
  • コースによってはジャケット着用MUSTのところもあるので、予約取れたところで教えてください。

というところが、主な注意事項として入手できた。
難題は英語のメールだな、しゃべり言葉じゃないから、なんとかなるか。

なぜオールドコースの予約が取れないかと言うと、ホテルとのパッケージにその多くを取られているのだという。コース自体はパブリックコースだから誰でもプレー可能なのだが、聖地を目指す人間は世界中にいるわけで、プレー障壁は高くなってしまうのだ。ホテルパッケージは高額で、ちょっと参加する気にならない。救いはコースはたくさんあるので、ぜいたく言わなければ、隣のニューコースや海岸沿いのジュビリーコース、お安いエデンコースなど、かの地でゴルフできない、という悲しい目にはあわなくてすむこと。ネットで探したところ、ブラックラダーホールという、大学の寮のホテルルーム?が1泊11,000円ほどで取れた。コースまでは歩いていけるという。到着翌日のジュビリー、翌々日はクルマで30分ほどのカーヌステイの予約も取れ、北海側の予約は完璧だ。早朝並ぶのは最終日で、プレーを終えたら大西洋側に移動する。こちらはトルーンの町にあるサウスビーチホテルというのが取れた。やはり一泊12,000円くらい、ただしゴルフ場は自力手配あるのみだ。

THE OPEN発祥の地プレストウイックからは、3つのテイータイムを提示された。Fri 8 Aug – 4 ball times between 10.31 and 12.01 or 15.52(sunset at 21.22)躊躇なく15時52分をチョイスする。これでこの日の午前中が空いた。近所にはロイヤルトルーン、ターンベリーという名門コースがある。木曜に予約が取れればオールドコースの早朝行列を初日に変更して、こちらに早く移動してもよい。ターンベリーはホテルもあるので、泊まればテイータイムもらえるのか? なんていう難しい?英語を日本テニス協会で海外業務長かったクマイ先輩に訳してもらい送った。しかし返事は…なしのつぶてであった。ロイヤルトルーン・チャンピオンシップコースは、月・火・木のみビジターを受け入れており、ここにも挑戦したがNGメールが帰ってきた。まあ、THE OPEN開催コース3つにプレーのメドがついたし、あとはタイ方式で飛び込んでもいい。グーグルマップで見る限り、現地の海岸線はゴルフ場だらけ、名門ではないコースも、それなりに面白いかも… ということで、予約完了のご褒美に航空券は、通常より5万円くらい高いプレミアムエコノミーを奮発した。これはあとで、ちょっとオトクな特典がついた。

今まではパンフレットでしか知らなかった、聖地セント・アンドリュース

ニューコースといえど120年前のオープンだ

雲海の下に、まだ見ぬボギーがパーが眠っている

横を飛ぶのは皇軍の名機、紫電改のタカbyちばてつや

おー、これがイギリスの大地か…




2:ロンドンでの調整

実は、今回の企画そもそもは、ウインブルドン=オールイングランド・ローン・テニスクラブで、U16日本チームを応援&レポートするというのがきっかけだった。その件は別項に譲るとして、2日ほどロンドンで空き時間ができたので、当然練習ラウンドをすることになる。ここで問題、どこでやるんだ? 地図で見ると、自分が泊まっていたウインブルドン周辺にはいくつかゴルフ場がある。単身飛び込みでプレーできるかどうか? コース名もわからず、PCも持ち込んでいないので調べようがない。それで泊まっていたホテルで地図を見せてもらった。近所にある2つのコースは、どうやらクームヒル、クームウッドという名前らしい。ただしメンバーシップかパブリックかはわからない。バスが近所を走っているようなので、バスにてコースに向かう。停留所よりだいぶ手前で降りてしまい、やっとのことでクームヒルに着いたが、「今日は日曜なのでメンバー・オンリー」と拒否される(当たり前か:笑)。地図を頼りに歩き回ったがクームウッドは見つからず、バスに乗り帰りかけたのだが、道沿いにゴルフコースの看板を見つけた。「リッチモンドパークGC」公園のゴルフ場ならパブリックのはずと、次の停留所で降り徒歩にてチェックイン。ここまでなんと1時間半、とぼとぼキャデイバッグを背負って歩いた初老・61歳をほめてあげたい。日曜なのにグリーンフィ5千円ほど、物価の高いロンドンではめっけものである。

リッチモンドパークGCにはプリンセス(パー68)とデユークス(パー71)の2コースがあり、それなりに難しい。初日はプリンセスを回り20オーバー、翌日も行きデユークスを16オーバー。合わせてボギーペースだから能力相応なのだが、草むらは全英オープンを思わせる深さでボール探しに苦労した。前の組が詰まると、 ティーグランドそばの草むらでアプローチ練習してみたが、まっすぐには出ない。草の抵抗が強いのだ。全英オープン開催コースはこんなものではなかろう、とにかくラフに入れてはいけない、と痛感した。それと、このイギリスという国はトイレが少ない。このリッチモンドパークにしても、36ホール回って、トイレは1箇所しかない。街なかにも少なく、駅のトイレで30ペンス払って大を済ませたこともあった。とにかくトイレを見たら、しておく! この国ではそれが鉄則なのだ。実は後ろの組にロンドン駐在の日本人の若者が二人いて「トイレ少ないよね?」と聞くと「そこらへんでしちゃうしかないです」と笑っていた。なおこのリッチモンドパークGCには、ウィンブルドン駅からタクシーで2千円ほど。帰路はもう少し近い駅(ここにはタクシー乗り場がない)があり、ロンドンで時間をつぶすにはもってこいのコースだった。

このバスにキャデイバッグ抱いて乗った日本人は少ないはず

ロンドンの街には旧い建造物が残っている、たぶんピカデリーサーカス周辺




3:目指せセントアンドリュース

8月4日月曜夕方、ヒースローでカジ先輩、セイウチ師匠とおちあう。「いやあ、こっち物価高いですよね」とロンドン・リピーターのカジ先輩に言うと、「我々はもう40ポンドまきあげられたよ」とボヤく。聞いてみれば「国内線は荷物は定型内1個まで、キャデイバッグは定型外で2個目だから40ポンド、約7,300円」なのだという。帰路も取られるわけでロンドン-エジンバラ・グラスゴーのゴルフ宅急便は往復15,000円、自分は搭乗券をちょい奮発していたので、荷物は2個までOK、定型外運賃もナシでラッキー! BAでスコットランドゴルフのときはプレミア・エコノミーおトクかも。

さて、エジンバラ到着は午後8時半、しかしまだ明るい。予約したレンタカーだと小さかったので車種変更、こうなると運転はカジ先輩まかせ、自分はカーナビ担当を仰せつかる。ここで問題発生! 本日宿泊予約したブラックラダーホールがカーナビに出てこないのだ。電話番号からは検索できず、アドレスはわからない。えーいままよ、とにかく目指すはセントアンドリュースである。ホテルは着いてから探せばよい。なるたけ明るいうちにメドの着くとこまで走りたかったが、9時を過ぎればさすがに暗くなる。それでも無事橋を渡りスコットランド第3の都市・ダンディーに入る。ナビがいうこと聞いてくれないのでここまでは地図で進行した。しかし地図の字はかの国でも豆粒であり、老眼鏡2,5使用の自分には判読不能になってきた。おまけに必死こいて見つめたもんだから、軽くクルマ酔い。クルマで酔うなんて何十年ぶりだよ。こちらの交差点はラウンドアバウト、カジ先輩は要領よく直進・右左折してくれるのだが、一度間違うとタイヘンだ。ただ、右手に海を見ながら走れば、地理上間違いなく目的地には着く。ということで、ときに細い道に紛れ込みながらセントアンドリュースをめざした。時間はかかったが「いつかは着く、止めてタバコさせてね」とドライバーは明るかった。3人並んで野辺で立ち小便、半円形の月が明るかった。白夜ではないが、夜の闇というにはあまりに明るい「これは青夜ですな」と自分。しかし、今夜ホテルにたどり着くことはできるのだろうか? 車内とはいえ野宿の不安は胸から消えていない。頼りのナビは機能しないのだから…

海岸線の細い道から、やや太い道に出て[→セントアンドリュース]の看板を見つけたときはホッとした。海岸線に街の灯りが広がっている。目指すホテルはどこだ? 現地は月曜の午後11時20分、中央通り?は若者たちでにぎわっている。ピザ屋で「ホテル知らない?」尋ねてみたが首を横に振られた「隣のバーで聞いいたら?」というが、生演奏中で無理なのは火を見るより明らか。道路の端にタクシーが止まっている「ブラックラダーホテル知ってる?」「イエス!」「ブリングミー、マイフレンドフォローユー」小さい街だし高くはないだろう、タクシーをナビにしてホテルに向かった。この手口、誰かに聞いたことがある。「困ったらさ、タクシーに先導してもらうんだよ」って。誰かは忘れたが、意外な盲点だ。こうして無事めざすホテルに到着、そこは大学の中の寮で、全英オープン開催時には選手たちも宿泊する名門であった。夏休み中なので開放されているとのこと、「よくぞたどり着けた」道中で仕入れたビール・ワイン・チーズ・サンドイッチはことのほか美味であった。

目指せセントアンドリュース、道路は続くよ、どこまでも

レンタカーはフォードのミニバン、1日2万円ほど

エジンバラ空港から、走れども走れども着かなかった。街中はこんなカンジ




4:足慣らしはニューコースとカーヌステイ

そんなわけで、前日寝たのは午前2時で、うち2人は日本から飛んできて時差もある。7時20分ジュビリー(セントアンドリュースには6コースあるのですな)のスタートはキャンセルして、もう少し遅く出ようということにした。朝食してウンコして9時到着、「いやあ7時20分のテイタイム遅れてすみません、なにしろ着いたのが朝3時で… 今からでも出れますか?」 みたいなことを言ったら「ジュビリーはフルだけどニューならOKかも」ということで、20分後にはニューコースをプレーしていた。ニューコースといったって1895年にできたわけで、すでに1世紀以上の歴史がある。チェックインしたときに渡されたコースガイドと本日のピン位置表を手に、手引きカートで回る。料金は130ポンド、後日カードの精算を見ると23,000円であった。このニューコース、オールドコースの隣である。いちばん海岸寄りにジュビリーコース、見える風景はどれも似たり寄ったり、ハザードが仙石原!であることは共通だ。

最初のうちは、コースガイドを見てポットバンカーに入らないように… などとやっていたが途中でやめた。だいたいそんなに精度がないのである。入ったら出せばよい、ポットバンカーの構造上、後ろにしか出せないから、飛距離を損した分と併せて1,5ペナくらいの計算になる。それでもバンカーはボールが見つかるからいい。仙石原に入った日には、発見確率3割だ。今回の特例ルールとして、ラフで見つからなかった場合はワンペナ扱いとした。ロストボールだと、悲しくてやる気がうせてしまうからね、仙石原は赤い杭のハザードである。

それでも1番2番はパーでスタート! ラフとバンカーさえ入らなければたいしたことはない。3番でラフにいれボール見つからずトリ、ハンデキャップ1の433ヤード6番ではスリーパットのトリ、瞬く間に貯金を使い果たしてアウト48。気がつけば実力相応のスコアとなっていた。10番ホールティーグラウンドからは水平線が見渡せる。遠く北海にまでつながる大海原だ。8月なのに20度前後の気温だが、それでもショートパンツのプレーヤーもいる。やってできないことはなさそうだが。結局後半も出入り激しくパーの数よりダボの方が多い。言い訳はコースをわかっていないこと、6362ヤード パー71に対して93は分相応の数字といえる。セイウチ師匠も似たようなもので、カジさんのスコアは記録するに忍びない。それでも、セントアンドリュースを回れたという事実は残る。「初日から充実している」とセイウチ師匠は満足そうに痛むひざをなでている。オールドコース18番のスウィルカンブリッジで記念写真も撮れた。明日はカーヌステイに挑戦だ。

カーヌステイまでは、クルマで小一時間。カーナビも気持ちよく動いてくれた。それはそれは小さな街で[→ゴルフコース]の看板もすぐに見つかった。こちらのゴルフ場は基本リンクス=海沿いなので、海のほうに向かっていけばコースはある。ロンドンやハワイのようにクラブハウスの入り口探しに苦労はない。カーヌステイの場合は、支払いはクレジットカードにて終了している。ちなみにお一人様165ポンド、27,000円弱が口座から引き落とされていた。キャデイも一人予約しておいた。知らないコースだし、一人くらいいたほうがいいだろうという判断。我々のパーテイにはアンディと名乗るドイツ系のキャデイがつき、長幼の序からしてセイウチ師匠のバッグをかついでもらった。シンプルなクラブハウスでチェックインし、自分とカジ先輩はトロリーにバッグを載せ、1番テイへ。389y、コースガイドによれば左を狙え、右だとグリーンが見えないとある。210が精一杯のドライバーであるが、なんとかフェアウエイに残り、セカンドはユーティリティで狙えた。幸先よいパーオン、グリーン上も2打でまとめ、ちゃんとしたparでストートした。2番ホールも5Wでパーオン、とはいえ30mほどの上りのパットが残り、力いっぱい打ったらダウンパーカー(オーバーよりすごいの意)、お笑い4パットでダボ、そうそう甘くはないのだ。それでもアウトはそれほど厳しくないのだろう、8オーバー44で折り返した。キャデイの助言を得たセイウチ師匠は39! おーさすが東千葉ハンデ11、ボール探しの苦労ないとそんなに違うか1バーデイ5パー。

アンディはいいヤツで、残る2人のボールの行方も見ていてくれる。パットのラインも教えてくれる。これは終わってから、我々からもチップ出さないとね。ところで、今日こそは80台!と意気込んで臨んだinだが、途中で雨が降ってきた。傘を開き、タオルを出しなど忙しく準備をしたのは13番ショートのティグラウンド、141ヤードをたしか6番で打ったのだが、高く上がりすぎてガードバンカーにパイルドライバー! 見事な目玉焼きが出来上がっていた。叩きだすのに2打を費やしダボ、さあ、建て直しと心機一転したはずの14番ドライバーは、見事なひっかけで左のOBゾーンへ消えた。打ち直しのテイショットも同方向へ飛んだが、アンデイは「今のはある」という。傷心のまま左のブッシュに向かうと、アンデイは「あった、あった!」と叫ぶではないか。行ってみると確かにある。ゾーンとしてはセーフ。しかし打てる方向はOB方向のみ、まあアンプレアブル扱いにしてもらって、とぼとぼとブッシュに突っ込んだあたりから、5打目を打った。それにしても潅木の中のボールをどうやって見つけるのか、アンデイの眼力に恐れ入った。このホール9! 次のホールでも同じOBをやって8! 百叩きの刑まで視野に入ってきた、トーナメントコースはinのほうが難しいとされるが、カーヌステイもその例に漏れず、このあとには、あの「バンデヴェルデの悲劇」でしられるバリーバーンが待ち構えている。どうするK島…

17番ティグランドで、アンディから説明を受ける。2位と3打差で18番テイに立った無名のフランス人バンデベルデはこのあたりのラフ(もちろん仙石原)に打ってきた。そこから無理してグリーン狙って観客席へ、返しを小川・バリーバーンに入れてという、我々のようなゴルフで+3。プレーオフに持ち込まれて敗れたいわゆる「カーヌステイの悲劇」である。17番では、そのバリーバーンが障害物としてフェアウエイを横切っているのだが、最初の流れはテイグランドから149ヤード。越えるには球が上がりさえすればOK、2つ目の流れは233ヤードなので、たぶん届かない。ようするにどフックさえ打たなければいいということで、ドライバーには、さほどプレッシャーかかりません。そういう気楽さに助けられ、セカンドの5ウッドもまっすぐ行ってくれて久しぶりのパー、どうやら100切りが見えてきた。18番はセカンドで狙えばバリーバーン実に嫌なハザードなのだろうが、ティショット飛ばなかったアマチュアには無関係、手前に刻んで2パットのボギー、なんとか96回で上がってきた。 前半好調だったセイウチ師匠も同行2名に足を引っ張られ51と沈没、それでも88は素晴らしい。アンディへの支払いはセイウチ師匠50ポンド、我々が10ポンドを渡した。それにしてもカーヌステイはホントに小さな町だった。試合のとき選手やスタッフ、プレスは20分ほど離れたスコットランド第3の都市、ダンディーから通ったのでしょうね。

クラブハウスは機能的に作られている。日本のバブルコースとは全く違う

そこには、ぼうぼうたるリンクスが広がる

初日、強気のカジ先輩はショートパンツでのラウンド

17番グリーンからR&A本部を望む

カーヌステイでの全英オープンは過去7回、直近は2007年で優勝者はP・ハリントン

風と小川とバンカーがカーヌステイを彩る

カーヌステイの洗礼を浴びた3人、18番ホール・グリーンにて

061




5:オールドコースの緊張

今回の旅のメインは、オールドコースをおいて他にない。1番テイの後ろのR&A本部も、17番ホール横のホテルも、テレビで見慣れた風景である。メジャー・トーナメントの風景で憶えているのはマスターズのオーガスタとここは双璧、マスターズは毎年だからともかく、ここは数年に1回の開催なのだが、やはり「聖地」という権威がそうさせるのだろうか。早朝1番ティの横にあるスターター・ハウスに並べば、バロット(抽選)でプレーできる。6時に行けば多分OKとは言われたものの心配なので5時45分着、すでに8人ほどの腕利き?が待ち構えている。このくらいの人数なら抽選なしだろう、と思っていたら案の定先着順だった。カジ先輩は「俺、今日はやめとく、二人で回っておいで」と言うので、その事情は詮索せず、二人まとめて空き枠のある時間を探したら13時30分だった。これならトロリーも使える「メシ食ってからラウンドですね」セイウチ師匠と目と目を合わせた。日本から持参したハンデキャップ証明書を提出し、無事手続きは完了した。あ、ちなみにハンデキャップ証明書はオール日本語で、こりゃどっかに13と書いて、四角いハンコ押せばわからないなあ、と思いました。

学生寮の朝食は充実したバフェで、英国滞在中最高のブレックファストであった。判で押したようにパン・卵・ソーセージ、焼きトマトがあればラッキーという朝食を食べてきたので… 朝から野菜が食べられるからいい、この日もデザートの果物までしっかり食べきって、市内見学。ホントに石だらけの街であった。ティータイムまで時間があるので、ガラにもなく植物園をオヤジ散歩、ま、しかし半日もあれば十分でコースに戻ってきてしまった。早朝にハンデキャップ証明を出し忘れたセイウチ師匠がスターターを訪ねると「いいところにきた」と言わんばかりだ。「11時30分のスタートが二人分空いた。20分後だがやらないか?」と言う。それはラッキー! 日のあるうちに移動できれば、ドライブも楽勝だし。おっと、ここで問題発生、午前中のスタートはトロリーさえ使えない「担ぎ」のゴルフだ。もちろん、それを想定して、キャデイバッグは担ぎ用の軽いヤツを持参してきてはいるが… これも経験、165ポンドのグリーンフィを支払い1番ティーグランドに向かった。向かったといっても、スターターハウスや支払い窓口から5,6mしか、そこは離れていないのだが。

同じパーテイはジョーとアダム。ミネソタから来た親子だが卵は売っていないようだ。なにしろ急に決まったスタートだ、おおあわててでパット練習、3分ほど転がすと我々のティタイムがやってきた。名前を呼び出されることもなく(試合じゃないから当たり前か)ティグラウンドへ。オナーは正規の予約者であるアメリカ人親子に譲る。1番フェアウエイは18番と共有で広いからノンプレッシャー、ただし若干アゲンストで155y残し。アゲンストを考えるとUを選択すべきなのだが、自分の決断は5アイアン。だってコースは硬くてランが出るというし、ピンは手前から5yの位置に切ってあったから。果たして5鉄はナイスショットであった。だがしかし、グリーン前でボールは消えた。そこには小川が流れていたのである。コースガイド見ながら、気がつかないところに、緊張しまくっている自分を見た。ポリポリ頭をかきながらボールを拾いピッチングで転がす。うまく下1mについてくれて、ワンペナ払ってのボギー、まずまずのスタートになった。

しかし、1番でツキを使ったツケは2番でその反動となって現れる。折から強くなってきた風に苦労してピン横4mほどに4オン、アプローチで球を上げようとしたのが敗因、どうもここではグリーン周りパターしかないのだ。そして3パットは+3のトリ。頭が白くなった。日本でもスコットランドでも、パットは下につけないといけないあるよ。それでも411yと長い4番パー4で、初パーを拾う。3mほどのパットをねじ込んだのだが、とても嬉しかった。そこに大チョンボの伏線があった。続く5番ロングでセカンドが蛸壺バンカーにつかまる。後ろに出すっきゃないのでサンドウエッジを抜こうとしたがないのだ。SWどころかAWもPWもない。4番でアプローチしたときグリーン周りに置き忘れたのだ。セルフプレーには慣れているし、アプローチ3本セットをまとめて置き忘れるなんて滅多ないのだが、初パー拾えた喜びと、カツギという不慣れな環境でやってしまったのだ。戻るといってもロングホールの2打め地点では、そうもいくまい。やむ終えずセイウチ師匠から借りてバンカーから脱出した。それにしても、このあとどうすんだ? せめて1本でも残っていれば、なんとかなるのに… セルフプレーには慣れているが、担ぎということもあり、パー拾えて気が抜けたこともありで、やっちまったのだ。

頭クラクラしながら、6番テイに立つとマーシャルのおっちゃんがやってきた。手には我が頼りとするウエッジ3本、「ユーの忘れ物では?」いやいやかたじけない。イソップで、金の斧、銀の斧、銅の斧を持って女神が現れる話があるけれど、まさにそんな気分だった。ありがたく押し頂く、あのときはチップ渡すべきだったと今になって思うがあとの祭りか。ま、しかし、そういう人が一日に何人もいるだろうな… それにしても、この日は向かい風がキツかった。ドライバーは低めにテイアップし、ランが多めに出るように打っていくが、セカンドはウッドかユーティリティしか出番はない。やっとアゲンストが終わった7番でパーオンするも3パット、アウト3164ヤード・パー36に対して46は実力相応の数字だろう。仙石原への打ち込みゼロ(ということは球捜しゼロ)が救いであった。

日本と違って、ハーフターンの休憩はない。このあたりから、やっとコースの風景とかに目が行くようになってきた。北海に連なる海原が大きく広がっている。あの先に油田があって、スコットランド独立の財源として注目されている(結局独立はNO!でしたね)。でも、それより、こんな雄大なコースを何十と所有していることのほうが、財産のように思うけどね。10番は311yと短く、前の組がグリーンに乗るのを待って打つ、こんなとこに限ってどヒッカケが出る。カーヌステイでもやったやつだ。どう探しても見つかりそうにない潅木の中へ打ち込み打ち直し。さすがに2打めは残り90yあたりに着地、AWで追い風の力を借りてナイスオン、1パットでまとめ、いわゆるOBボギー。やるときはやるのである。このへんから、踵が痛くなってきた。日本でやった怪我?なのだが、治りが遅く当地まで持ち込んでしまった。足を引きづりながら、聖地を歩く姿は「いかにもコースにやられました」の風情に見える。相方のセイウチ師匠も、ヒザが痛いらしく歩みがセイウチになってきている。16番、ギャラリーの中からカジ先輩が手を振る。おー待っててくれましたか!以下カジ先輩のブログより引用

 スコットランドは日の出5時40分。日の入り9時50分でした。セントアンドリュースのオールドコースは、3年先まで予約が埋まっているとか。
 どうしても回りたい人は当日、日の出前(そこそこ寒い)から並び、クラブハウス(18番ティーグラウンドから見て真ん中の小さい小屋)で6時から先着順に受け付け、空いているところにいれてくれる。
 私たちバカ男3人は、事前にその情報を仕入れ、3泊した最終日に並んだ。前日の朝は日の出に80人くらい並んでいるのを見てやめた。大体20人くらいの空きがある模様。
 うむうむ。
 そして当日。気が張って出かけ、前から6人目くらいに私たち、並べた。いけそうだぞ。朝6時の時点で40人くらいの列。ほとんどが現地のお年寄りで、日本人3人だけ浮いていた。お年寄りには「天下のオールドコース」の認識がまるでないカンジ。いいなあ。荒川の河川敷に並んでいるようなカンジにも見えてくるのが不思議。
 受け付け開始。私たちにきた。おっとお、15人くらい、まだ空いている。
 ゴルフは4人で回る。空いているのは、残り1人の枠ばかり。やっと2人枠があった。私は3人の中でいちばん下手なので、そこを譲り、1人枠で堂々と回る勇気がないのでキャンセル。だって下手なんだもん。迷惑かけるもん。
 結果、その謙虚さが正解だった。山登り(このブログ前述参照)も謙虚に断ればよかったのだ。
 なんと、2人は午前中(12時まで)のプレイに前倒しになり、そうなると、手引きカートも使えない。バッグを担いで回らなければいけないのだった。
 オウ・マイ・ゴッド。
 (よかった。ビールを飲んで海岸散歩だ。ふらふら町歩きだ。ああよかった)
 3時間20分後。遠くからセイウチ師匠とマメコブンがコースに見えた。マメコブンは左足がつっているような。セイウチ師匠はのろく、バッグを肩から降ろしては両膝を揉んでいる。ほらほら。だろ。でしょ。
 16番ホールから私はセイウチ師匠のバッグを担ぎ、キャディ気分。
 「ハイ、パター。はやいですよ。ドライバーは左狙い。あ、ちょっと待って。観光客が入ってきた。えーと、残り100ヤードないです。ランニングで」
 無口な2人とは対照的に、私だけ元気に写真を撮ったり、指図もできていい気分。

とまあ、他人の目には正確に映るもんですね。記念撮影で渋滞するスウィルカンブリッジを無事渡り93ストロークにてホールアウト。再び先輩のブログに戻る。

 終わって3人で有名な「ジガー・イン」に入り、お疲れさまのビール。
 セイウチ師匠が言った。
 「いやあ、最高でしたよ。でも死ぬかと思ったね、一瞬。カジさんにバッグを持ってもらったときは、カジさんが天使に見えたよ」
 今回の主謀者であるマメコブンが言った。
 「うーん。もういいや、オレ。誘っておいてごめんなさい。オレ、もう一生ここ来なくていいや。オレはタイでやるのがいちばんいい」

はい、そうなんです。K島にとっては、あのいい加減なタイ・ゴルフが一番です。飛行時間7時間でたどりつく大東亜共栄圏こそが、ゴルフOKエリアでもあるのです。と、そのときは思ったのである。まあ、今も思っているか…

練習グリーンは案外というより、異常に小さい

グリーンはつながっているのが7箇所。あちらのアプローチがこちらに、こちらのロングパットがあちらに…

セントアンドリュース城跡、まあ絵葉書と同じといえばそれまで

戦い終えて日が暮れて、まだ暮れてないか

ニューコース、どこまでも広い

「ああ荒野」寺山修司のタイトルを思いだす

豊饒な海、波静かな佳き夏の一日

コースから見える草原、増設するスペースは、まだまだある

天候にもパートナーにも恵まれて、ホールアウトは目前だ

スウィルカンブリッジにて、ここまで89打、師匠は88打

ジガー・イン ワインもハンバーガーも美味だった




6:プレストウイックでの覚醒

オールドコースをホールアウトした我々は、次の目的地トウルーンへと向かった。無料のフリーウエイ(あ、無料だからフリーウエイなんだよね。日本のは有料でしかも高いからハイウエイか)を突っ走る。ここで問題、ドライバーのカジ先輩はヘビースモーカーなのである。レンタカーといえど禁煙車だから、喫煙休憩が必要なのだ。ところが、いわゆるサービスエリアが見つからない。ガスステーションの指示があったので、そちらに進路を取ると、フリーウエイの外に出てしまう。まあ、しゃあないコンビニの横にクルマを止め水分補給&水分放出。一人は煙分補充も… 現地人のクルマも多く止まっていた。我々のようにこそこそ壁を探している人はいなかったが、この国でフリーウエイのそばに有料トイレ開店したら事業として成功しそうだ。あと、車内便器なんかもイケると思う。ま、とにかく無事トルーンの街に着く。こちらは大西洋側、正確にはアイリッシュ・シーなのだが、ターンベリー、ロイヤルトルーンなどの名門が海岸線に並ぶゴルフ銀座でもある。そのトルーンの街はずれにあるサウスビーチホテルが拠点である。

当地ではゴルフの予約は1つしか入れていない。翌日午後3時52分テイアップのプレストウイックだけである。前にも触れたが、ターンベリーとロイヤルトルーンは曜日の関係か、メールの英語が拙すぎたか、それともアジア人蔑視かでNGであった。そのプレストウイック、全英オープン発祥の地として知られている。ただしK島はしらなかった。だが今回、旅の指導を請うたタケイさんによれば「ゼッタイ行くべき! 行くなら夕方のテイアップで」とのお墨付きを受けている。ホテルのデスクで「今日はプレストウイックですぜ」とオヤジに言ったら「あそこは、チョー素晴らしいコースだけど、ゼッタイにキャデイが必要」と強調された。「了解、交渉してみる」と答えた。

コースに着くと、万国旗がはためいて、トーナメントの準備が進められている。どうも週末から世界ジュニアの試合がある模様、参加者のボードを隅から隅まで探したが、日本人の名前はなかった。残念。1番ホールはRailway、その名の通り鉄道が横を走っている。ご丁寧にも「ティショットはミドルアイアンで打て」と、テイグラウンドに指示が出ている。日本にもあるぞ、このホールは5番アイアンより大きいクラブ使用禁止みたいなホール。河川敷とか山岳とかで、悲しい思いをした記憶が甦る。で、飛ばない自分はUで打ち、セカンドもそこそこにグリーンの手前、寄せてパー。なーんだ巧いじゃん! つかまったのは3番Cardinal、ドライバーを右手にあるポー・バーンに打ち込み、フェアウエイに戻れないままグリーンへ。マグレのチップインでダボであがったのだが、ホテルのおやじに言われた「キャデイが必要」の言葉がよくわかる。コースを外れたとき、どこへ打てばよいのかさっぱりわからない。あるがままのリンクス、に作ったコースは自然に人間の手が入れられていない。そこいくと日本のコースはなあ、見栄えのいいように樹木を植え、ちょっとだけ難しくするために池やバンカーを作り、でもあんまり難しくなっちゃうと、お客さんが減るので、距離の短いテイグラウンドを盛り土して造り… 自然破壊がビジネスに優先する悲しさ。原発の思想と根っこはつながっている。

5番ショートホールで詰まっている。前の組のガイジンが「プレーが遅い」と両手を広げて怒っている。しかし、コースの風景にぶっ飛んだ。グリーンはどこ? 目指すグリーンが見あたらない。Himarayaと名づけられたそのホールは、グリーン手前に万里の長城が立ちはだかり、グリーンは視覚に捕らえられないのである。セイウチ師匠は「そういえば、このホールのこと伊集院静が書いてましたよ」と証言。たしかに、書きたくなるなあ、この風景は。よくみると万里の長城には赤と緑と白のマークがついていて、それぞれがグリーンの幅とピン位置を示すらしい。というのは、我々は結局よくわからず、なんとなく3つのうち真ん中にあるマークに向けて打ったのである。表示は181y、クリークで打ったらナイスショットで、なんとグリーンに乗っているではありませんか。あ、もちろんピンの上についていて距離もあり、3パットでしたが… 

プレストウイックでつくづく思った。バンカーでもいい、ボールがあってほしい。キャデイなしで回るにはたいへん難しいコースなのだ。コースにどんな罠が待ち構えているかわからない、それでも安全に見える方向に打っていく、まるで地球を相手にボクシングしているような感覚である。打てども打てども、強烈なカウンターが返ってくる。一発や二発のラッキーパンチは当たっても、大地のボデイブローに疲弊していく己の姿が見える。そして折からの雨である。ふー、ため息をついて見上げれば鉛色の空、まっすぐ行ってくれよと念じながらティアップし続けるのだった。11番テイからアイリッシュ・シーが望めた。ウイスキーの蒸留所でしられるアイラ島は、このはるか彼方にあるのだろう。K島は左党ではないから、どっちでもいいんだけど、前日、飲兵衛のセイウチ師匠はやたら興味を示していた。しかしヒザに爆弾を抱え、雨に濡れた巨体では、もうそこまで思いを馳せる余力はなさそうである。それでも「あー、今日はカメラ忘れちゃったよ」と日本人らしい発言、「いいんですよ、写真撮ると、それで安心して忘れちゃうから、心のフィルムに刻み込んでおけば」とカジ先輩。いいこと言いますな。

雨は13番ホールで上がったが、スコアのほうは相変わらず湿っている。15番までで22オーバー、スリーパット5回。どこがハンデ13なんだ? プレストウイックではハンデ証明書だしてないからいっか。数字的には100打たなければよしとする、あと3ホール、パー71なのでダボペースでも99、大叩きさえなければなんとかならあな。ただ上がり3ホールって難しくしてあったりするから… 16番はカージナルバックという愛称がついている。カージナルの形をしたバンカーがあり、その背中にグリーンが乗っかったように配置されているからか。290ヤードの打ちおろし、日本であればドライバー抜くか迷う局面だが、このごに及んでスコアメークにこだわるほどでもない。ドライバーを丁寧に振ったら、グリーンまで30ヤードくらいまで飛んでいた。セイウチ師匠にいたっては、ほとんどグリーンまでの距離を打ち抜き、ただし20ヤードほど横にずれていた。カジ先輩は地味に80ヤード残し。あるがままの自然を生かしたコースだから、そんなホールもあるのだ。その30ヤードのアプローチは悩んだ。当地のコースにおいて、アプローチはパターが原則。芝が薄く地面が硬いせいか、上げるアプローチはミスる確率が異常に高い。とはいえ、30ヤードの距離感をパターで出せるとも思えず、ピッチングで低めの球を打ってみた。しかしあえなく、グリーンオーバー、そうそう短いホールはグリーンが受けてないこと多いんだよね。日本の受けグリーンは客を早く回すための設計であり、こちらは地形のままの傾斜を生かしているわけで… グリーン奥から2.5mほどに寄せ、なんとかパットをねじ込む。inに入って初のパー、空を見上げると青空も見えている。そして遥かに海を望む地平線からは、今にも沈もうとしている夕陽が泣いている(byスパイダース)。

17番ティグラウンドに登る、そこは小高い丘になっている。我々3人の青い影(byプロコルハルム)が、長く尾を引いて16番グリーンにまで伸びている。5,60mはあろうかというそれは、我が30年余のゴルフ生活で〈ザ・ベスト〉、もっとも美しい風景だった。写真は、どうせ宮本卓あたりが撮ってるだろう、心のフィルムに刻んでおいた。今わのきわに、想い出す5つの情景に間違いなく入るだろう。その17番が、またインパクトのあるホールだった。210ヤードほどのへなちょこドライバーは、それでもフェアウエイ・キープ。スプリンクラーの距離表示は残り200yだ。だがしかし、フェアウエイの先にグリーンは見えない。ドッグレッグしているのかと、左右を探すが旗影ひとつない。危ないときは安全運転、7番アイアンで130yほど刻む。そしてフェアウエイの上り勾配を駆け上がると、その向こうにグリーンはあった。グリーン手前には巨大なバンカーが口を開いて待っている、はい当然オーバーめに打ちましてジャンパー(オーバーほどでもない)。寄らず、入らずのダボ、妥当な結果でこのホールALPSをクリヤーした。そうなのだ、当コースにはヒマラヤもあれば、アルプスもあるのである。

最終ホールは288y、フェアウエイも広くピンポジも凝っていない、我々3人にパーをプレゼントしてくれた。「いつか、またおいで!」と、お土産をくれたのだろう。夕陽はほとんど地平線に消え、明日からのジュニア大会に備える準備だけが、粛々と進められている。午後9時、プレストウイックは我がゴルフ観を覚醒させるに十分なコースだった。大地と戯れ、地球と格闘する。これぞPLAY! これぞGOLF! いい旅になった。快く送り出してくれた家人に礼を言いたい。

ホテルのテラスが張り出していて、英国の香りがする

ホテルにて、翌日の戦略を練る しかし髪が少ない

サウスビーチホテルのロビー周辺、こじんまりしたいい施設だった

トゥルーンの海岸線、グラスゴーから1時間、クライド湾に面している

北の渚は果てなく青く、波は寄せても帰らないあなた(砂の十字架by中村晃子)

どこまでも丘が続く、白球と戯れるオヤジたち

海岸線を走れども、目指す聖地は彼方であった

夕景、長かったツアーも今日でおしまい

タータンチェックとバグパイプ!この日はセレモニーがあったらしい




7:そしてクールダウン

長かったようで短かった聖地探訪の旅も残すところ1日、最後の日くらいは気楽なゴルフがいい。セイウチ師匠はカートに乗せてあげたい。我々が最終日に選んだコースは、ホテルから歩いてもいける、カジュアル・トウルーンGC。もちろん正式な名前は別にあってなんとかかんとか、パー66〜70のコースが3つあり、そのうちカート乗り入れ可は1つだけ、なのでそこをランチ休憩とったものの2周、36ホール遊んだ。カジ先輩は途中でキジ打ちに消える、聞けばゴルフコースでキジ打ち通算60回とか。凄い!自分はまだ3回しかやってない。ゴルフは修行なんだ(笑)。

大笑いのシーンもあった。何番だか忘れたけど、チョー短いパー4。1周目は自分が、2周目はカジ先輩とセイウチ師匠がともにワンオン! イーグルパットはみんな外して「ただのバーデイ」しかし、ただのバーデイって、素人にはなかなか言える機会ないですよ。それでもハザードはそこそこあって、かの地ではどこにでもある「仙石原」と「紫地獄」。仙石原はすでに説明したが、紫の花が咲く草むらもまた、ボールがかくれんぼするのにピッタリ、何球か置き忘れてきた。カジュアルトルーンのグリーンフィは格安で、週末だったにも関わらず3,000円しなかった、2周目はもっと安く1,500円、諸物価の高いイギリスにおいて、ゴルフ代だけは本当に安い。日本が高すぎるだけか…

スコットランドの食事情も記しておきましょう。セントアンドリュースではイタリアン、名門ジガー・バーなどでの夕食。3人でビール1パイントづつ、白ワイン2本をシェア、肉料理やハンバーガー食べまして割り勘5,000円くらいでしたか。トウルーンのホテルでは、毎日バーでスコッチをすこっし舐めまして、これが1杯800円くらい。うーーん美味かった!という記憶はないので、やっぱりイギリスか。

トウルーンからの帰路は、グラスゴーの空港を目指す。万一を考えて早めに出たのはいいが、日曜の早朝ゆえ道はガラガラ。ドライバーも余裕の運転、窓をあけて煙草をふかす。空港周辺で[RENTAL CAR RETURN]の看板が見つからず手間取るも、フライト2時間前の到着なら文句なし。ここで最後の難関、レンタカーの精算をしようとしたら、メガネ女子の担当者が私を睨む「Have you smoking in the car」おー、そういえばカジ先輩、1本だけ吸っていた。気にはなったが、ここまで運転の労をねぎらう意味で、注意もしなかったのだが… さて、いかにしてこのピンチをしのぐか? 張本人は事務所の外でうまそうに煙草をくゆらせている。しょうがないなあ、目を合わせながら「Smoking?」「No smoking!」と、全く間抜けなやりとりだ。唇をちょっと横に曲げた彼女はSmellなんちゃらと言い「だからアジア人はダメなんだ」という目つきで、それでも無罪放免となった。最後の最後で、心臓バクバク、煙草はカラダに悪いって。

帰国便の中で、映画「ジャッジ!」を見る。D通とHH堂のクリエイターが登場するギョーカイ映画。なかなか感動的だったのだが、その中に今回の旅を思い起こさせるコピーがあった。「逆風は振り返れば追い風になる」おお、その通り。これからも我田引水で(そういう意味じゃないか)笑いながらいきましょう。

K島(マメコブン)あかん、体重移動がないやんけ

カジ先輩 45年前はテニス国体少年の部ベスト8

セイウチ師匠 東千葉CCハンデ11 ドライバー270ヤード




カジ先輩のブログ http://www.nikoli.co.jp/blog/kaji/





8:その他写真 抜粋

029

031

034

035

036

037

041

047

048

049

054

057

060

067

069

072

078

080

084

086

104

105

106

107

114

118

122

124

129

136

146

149

165

179